営業でなかなか成果が出ないとき、多くの人は「提案力が足りない」「クロージングが弱い」「商品知識が足りない」と考えます。
もちろん、提案力や商品理解は大切です。
ただ、実際の商談で成果を分けるのは、提案の前にどれだけ相手の状況を理解できているかです。
相手の課題、理想、判断基準が分からないまま提案しても、話はなかなか刺さりません。逆に、ヒアリングが上手い営業は、無理に売り込まなくても「それなら詳しく聞きたい」と思ってもらいやすくなります。
この記事では、営業職として成果を伸ばしたい人に向けて、営業ヒアリングの基本の流れ、商談で使える質問例、NG質問、ヒアリング力を伸ばす振り返り方法まで解説します。
営業で成果が出ない人ほど「話しすぎている」
営業というと、話が上手い人が成果を出すイメージを持たれがちです。
しかし、成果が出る営業ほど、最初から一方的に説明しません。
なぜなら、相手の状況を理解しないまま話しても、その提案が本当に必要とされているか分からないからです。
たとえば、営業側が「この機能が便利です」「この価格ならお得です」と説明しても、相手が気にしているのが価格ではなく、社内説明のしやすさだったらどうでしょうか。
話している内容は悪くなくても、相手の不安とズレていれば商談は前に進みません。
営業で大切なのは、上手に話すことよりも、相手が話しやすい状態を作ることです。
提案前に確認すべきこと
提案前に最低限確認したいのは、以下の6つです。
- 今、何に困っているのか
- なぜそれが問題になっているのか
- いつから困っているのか
- これまで何を試したのか
- 解決できたら何が変わるのか
- 判断するときに何を重視するのか
ここを聞かずに提案すると、商談は浅くなります。
逆に、ここまで聞けていると、提案内容に説得力が出ます。
「この人はちゃんと分かってくれている」と思ってもらえるからです。
なかなか成果につながらないかたは営業で成果が出ない原因7つ|明日から改善するチェック表をもとに現状をチェックしてみてください。
ヒアリング力が高い営業の共通点
ヒアリング力が高い営業は、単に質問数が多いわけではありません。
相手が答えやすい順番で聞き、相手の言葉を受け止めながら、本音に近づいていくのが上手いです。
いきなり深い質問をしない
初対面の相手に、いきなり「本当の課題は何ですか?」と聞いても、相手は答えづらいものです。
最初は、答えやすい質問から入ります。
たとえば、
- 現在はどのような体制で進めていますか?
- 今はどのような方法を使っていますか?
- 直近で力を入れていることはありますか?
このような質問なら、相手も答えやすくなります。
最初に現状確認をして会話の温度を上げてから、課題や悩みに入るのが自然です。
事実だけでなく感情も聞く
ヒアリングでよくある失敗が、事実確認だけで終わることです。
たとえば、
「今はどんなサービスを使っていますか?」
「月にどれくらい使っていますか?」
「担当者は何名ですか?」
これらは大切な質問です。
ただ、事実だけを聞いても、相手がなぜ変えたいのか、何に不満を感じているのかまでは見えてきません。
そこで必要なのが、感情を聞く質問です。
- 今のやり方で、不満に感じていることはありますか?
- 正直、どこが一番ストレスになっていますか?
- この状態が続くと、どんな影響が出そうですか?
- 理想と比べると、どこにギャップを感じますか?
人が行動する理由には、必ず感情があります。
不安、不満、焦り、期待、面倒くささ、悔しさ。
そこを理解できると、提案の言葉が変わります。
顧客の言葉をそのまま使う
成果が出る営業は、顧客の言葉をよく覚えています。
たとえば相手が「問い合わせは来るけど、商談につながらない」と言ったなら、提案時にもその言葉を使います。
「先ほど、問い合わせは来るけど商談につながらないとおっしゃっていましたよね。今回のご提案では、問い合わせ後の導線を整えることで、商談化率を上げる設計を考えています」
このように伝えると、相手は「ちゃんと理解してくれている」と感じます。
逆に、営業側の言葉に置き換えすぎると、相手の温度感とズレることがあります。
ヒアリングでは、相手の表現をメモしておきましょう。
営業ヒアリングの基本の流れ
ヒアリングは、思いついた質問を順番に投げるものではありません。
おすすめは、以下の5ステップです。
- 現状を聞く
- 理想を聞く
- 課題を聞く
- 背景を深掘りする
- 判断基準を確認する
この順番で聞くと、商談が自然に進みやすくなります。
ステップ1:現状を聞く
最初は、相手の現在地を確認します。
いきなり核心を突こうとせず、まずは答えやすい質問から入りましょう。
質問例は以下です。
- 現在はどのような方法で進めていますか?
- 今の体制は何名くらいですか?
- 直近で一番力を入れていることは何ですか?
- これまでに試した施策はありますか?
- 現在の成果には満足されていますか?
現状を聞くことで、提案の前提が整います。
ステップ2:理想を聞く
次に、相手が本来どうなりたいのかを確認します。
現状だけを聞いても、課題は見えません。
課題とは、現状と理想のギャップです。
質問例は以下です。
- 本来はどのような状態を目指していますか?
- 半年後、どんな状態になっていたら理想ですか?
- 今より何が改善されると嬉しいですか?
- 最終的には、どのような成果を出したいですか?
- 逆に、これだけは避けたいという状態はありますか?
理想を聞くと、相手が何を大切にしているか見えやすくなります。
ステップ3:課題を聞く
現状と理想が分かったら、次は課題を確認します。
ここで大切なのは、営業側が勝手に課題を決めつけないことです。
「これが課題ですね」と言い切るより、相手自身に言語化してもらう方が、提案を受け入れてもらいやすくなります。
質問例は以下です。
- 理想に対して、今一番ネックになっていることは何ですか?
- 目標達成を妨げている要因は何だと思いますか?
- これまで取り組んでみて、うまくいかなかった理由は何ですか?
- 今の状態で一番困っていることは何ですか?
- 優先順位をつけるなら、どこから解決したいですか?
課題を聞くときは、相手を責めるような聞き方にならないように注意しましょう。
「なぜできていないのですか?」よりも、「どこがネックになっていますか?」の方が柔らかく聞こえます。
ステップ4:背景を深掘りする
課題を聞いたら、必ず背景を深掘りします。
たとえば、相手が「集客に困っています」と言ったとします。
この言葉だけでは、まだ浅いです。
本当に困っているのは、アクセス数なのか、問い合わせ数なのか、商談数なのか、成約率なのか分かりません。
深掘り質問の例は以下です。
- それはいつ頃から課題になっていますか?
- 具体的には、どの場面で困ることが多いですか?
- これまでに何を試しましたか?
- 試した結果、どこがうまくいきませんでしたか?
- その状態が続くと、どんな影響がありそうですか?
背景を聞くことで、課題の本質が見えてきます。
ステップ5:判断基準を確認する
最後に、相手が何を基準に判断するのかを確認します。
ここを聞かないと、提案後に「検討します」で止まりやすくなります。
質問例は以下です。
- 判断する際に、一番重視されるポイントは何ですか?
- 価格以外で気になる点はありますか?
- 導入する場合、社内で確認が必要な方はいらっしゃいますか?
- いつ頃までに方向性を決めたいですか?
- 何がクリアになれば、前向きに進められそうですか?
営業は、相手の判断基準に合わせて提案を組み立てる必要があります。
判断基準を聞かずに提案すると、相手にとって重要ではない話をしてしまう可能性があります。
商談で使えるヒアリング質問例30選
ここからは、実際の商談で使える質問例を目的別に紹介します。
すべてを一度に使う必要はありません。
商談の流れに合わせて、必要な質問を選んで使ってください。
現状確認の質問
- 現在はどのような方法で進めていますか?
- 今の体制は何名くらいですか?
- 現在使っているサービスやツールはありますか?
- 直近で力を入れている取り組みは何ですか?
- 今の成果にはどのくらい満足されていますか?
現状確認では、相手が答えやすい質問から入るのがポイントです。
いきなり課題を聞くより、まず現状を整理した方が会話はスムーズになります。
課題を明確にする質問
- 今一番困っていることは何ですか?
- 目標達成の妨げになっていることは何だと思いますか?
- これまで取り組んでみて、うまくいかなかったことはありますか?
- 課題があると感じる場面は、具体的にどんなときですか?
- 複数課題がある中で、優先順位が高いものはどれですか?
課題を聞くときは、相手の状況を否定しないことが大切です。
「できていない理由」ではなく、「前に進まない原因」を一緒に整理する感覚で聞きましょう。
理想を引き出す質問
- 本来はどのような状態を目指したいですか?
- 半年後にどうなっていたら理想ですか?
- 今より何が改善されると嬉しいですか?
- 最終的に達成したい成果は何ですか?
- 逆に、避けたい状態はありますか?
理想を聞くことで、提案のゴールが明確になります。
相手の理想が分からないまま提案すると、機能説明や価格説明に寄りがちです。
感情を引き出す質問
- 今の状態について、率直にどう感じていますか?
- 一番ストレスになっている部分はどこですか?
- この状態が続くと、どんな不安がありますか?
- これまで対応してきて、大変だったことはありますか?
- 解決できたら、どんな気持ちになりそうですか?
感情を聞くと、相手の本音に近づきやすくなります。
ただし、関係性が浅い段階で踏み込みすぎると警戒されるため、現状確認のあとに自然に聞くのがおすすめです。
判断基準を確認する質問
- 判断する際に、特に重視されるポイントは何ですか?
- 価格以外で気になる点はありますか?
- 進める場合、社内で確認が必要な方はいらっしゃいますか?
- いつ頃までに方向性を決めたいですか?
- 何がクリアになれば、前向きに検討できそうですか?
判断基準を聞くことで、提案後の「検討します」を減らしやすくなります。
相手が何で迷うのかを先に把握しておくと、提案の精度が上がります。
次回商談につなげる質問
- 次回までに確認しておいた方が良いことはありますか?
- 追加で聞いておきたい内容はありますか?
- 次回はどなたも同席された方が進めやすそうですか?
- 今日の内容を踏まえて、次に整理すべきポイントはどこですか?
- 次回は具体的な進め方までお話しできればと思いますが、いかがでしょうか?
初回商談ですべてを決めようとしなくても大丈夫です。
大切なのは、次のステップに進む合意を取ることです。
ヒアリングでやってはいけないNG質問
ヒアリングは大切ですが、聞き方を間違えると逆効果になります。
ここでは、営業初心者がやりがちなNG例を紹介します。
尋問のように質問を続ける
質問ばかり続けると、相手は疲れてしまいます。
たとえば、
「今の課題は何ですか?」
「予算はいくらですか?」
「いつ決めますか?」
「決裁者は誰ですか?」
このように質問だけを続けると、相手は取り調べを受けているように感じます。
質問したら、必ず相手の回答を受け止めましょう。
おすすめの流れは、
- 質問する
- 回答を受け止める
- 少し要約する
- 次の質問に進む
です。
たとえば、
「なるほど、今は問い合わせ数よりも商談化率に課題を感じているのですね。ちなみに、その状態はいつ頃から続いていますか?」
このように、相手の言葉を受け止めてから次の質問に進むと、会話が自然になります。
答えを誘導する
営業側が売りたい方向に誘導しすぎるのもNGです。
たとえば、
「やっぱり今のやり方だと限界ですよね?」
「このサービスが必要だと思いませんか?」
「それなら導入した方がいいですよね?」
このような質問は、相手に圧を与えます。
本音を聞きたいなら、誘導ではなく確認を意識します。
「今のやり方で、続けやすい部分と難しい部分はありますか?」
このように聞くと、相手は答えやすくなります。
すぐに提案してしまう
営業でよくあるのが、少し課題を聞いただけですぐ提案することです。
相手が「集客に困っています」と言った瞬間に、
「それなら弊社のサービスが合います」
と伝えてしまうパターンです。
しかし、これでは浅い提案になります。
集客に困っているといっても、原因はさまざまです。
認知が足りないのか、サイトが弱いのか、広告運用が悪いのか、営業導線が弱いのか、紹介が生まれていないのか。
原因によって提案は変わります。
焦って提案するより、先に課題の背景を深掘りしましょう。
ヒアリングだけでなく、商談中の伝え方も改善したい方は、「営業で信頼される話し方とは?成果につながる会話術」もおすすめです。
ヒアリング力を伸ばす商談後の振り返り
ヒアリング力は、知識だけでは伸びません。
商談後の振り返りが重要です。
商談が終わったら、以下をメモしてください。
- 相手の現状
- 相手の理想
- 相手の課題
- 相手の感情
- 判断基準
- 聞けなかったこと
- 次回聞くべきこと
- 次のアクション
特に大切なのは、「聞けなかったこと」を残すことです。
成果が出ない営業は、商談が終わると反省が曖昧になります。
「うまく話せなかった」
「反応が悪かった」
「検討になってしまった」
これだけでは改善できません。
改善するなら、
「予算感を聞けなかった」
「決裁者を確認できなかった」
「現状の数値を聞けなかった」
「いつまでに決めたいか聞けなかった」
というように、具体的に振り返る必要があります。
ヒアリング力は、商談ごとの改善で伸びていきます。
ヒアリング力が上がると年収アップにもつながる
営業職にとって、ヒアリング力は年収アップにも関わる重要なスキルです。
なぜなら、営業の成果は評価やインセンティブに直結しやすいからです。
ヒアリング力が上がると、以下のような変化が起きます。
- 顧客の課題を正しく理解できる
- 提案の精度が上がる
- 成約率が上がる
- 顧客から信頼されやすくなる
- 紹介や追加提案につながりやすくなる
- 社内評価が上がりやすくなる
営業で評価される人は、単に話が上手い人ではありません。
相手の課題を理解し、解決策をわかりやすく提案できる人です。
その土台になるのが、ヒアリング力です。
もし今の会社で成果や評価が伸び悩んでいるなら、まずは商談の聞き方を見直してみてください。
それでも評価制度や商材、営業環境に限界を感じる場合は、営業スキルを活かせる職場を考えるのも一つの選択肢です。
よくある質問
営業ヒアリングで最初に聞くべき質問は何ですか?
最初は、相手が答えやすい現状確認の質問がおすすめです。
「現在はどのような方法で進めていますか?」
「今の体制は何名くらいですか?」
「直近で力を入れていることはありますか?」
いきなり課題や予算を聞くより、まずは会話の土台を作ることが大切です。
ヒアリングで沈黙が生まれたらどうすればいいですか?
無理に次の質問を重ねる必要はありません。
相手が考えている可能性もあるので、少し待つことも大切です。
そのうえで、「少し考えづらい質問でしたね。別の聞き方をすると、今一番手間に感じている部分はどこですか?」のように、質問を柔らかく言い換えると会話が戻りやすくなります。
ヒアリングと雑談の違いは何ですか?
雑談は関係性を作るための会話です。
一方でヒアリングは、相手の現状・理想・課題・判断基準を理解するための会話です。
雑談が悪いわけではありませんが、商談では雑談だけで終わらず、提案に必要な情報を整理することが大切です。
まとめ:営業は話す仕事ではなく、理解する仕事
営業で成果が出ないとき、提案力やクロージング力だけを磨こうとする人は多いです。
しかし、提案の前にヒアリングが浅ければ、どれだけ話し方を磨いても成果にはつながりにくくなります。
ヒアリング力を高めるには、以下の流れを意識しましょう。
- 現状を聞く
- 理想を聞く
- 課題を聞く
- 背景を深掘りする
- 判断基準を確認する
- 次回商談につなげる
営業は、無理に売り込む仕事ではありません。
相手を理解し、課題解決の道筋を一緒に整理する仕事です。
まずは次の商談で、説明を一つ減らし、質問を一つ増やしてみてください。
その小さな変化が、営業成績を変える第一歩になります。
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